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2009-12-01 22:39

「風」というテーマで小話1つ。
ブログ維持の為の短いアホなお話。

シリンさんと翔太君のお話。





風、それは法術の中でもかなり応用がきく属性であり、使い方を間違えれば思わぬ危険性もある属性でもある。

『姉さん、竜巻の法術って使えるか?』
『あー、うん。攻撃的なものだけどね~』

いつぞやは巨大な竜巻の法術を作り上げて、かなりの損害を出した事がある。
懐かしい話だ。

『竜巻ってわけじゃないけど、風がびゅっと吹いてその場からふっと消えるのってカッコよくね?』
『それって忍者のどろんって消えるみたいな感じの?』
『そうそう!!忍者って憧れないか?!』
『仮面ライダーが憧れじゃなかったの?』
『仮面ライダーは実写!忍者はアニメ!』
『……実写とアニメって』

翔太はぐっと拳を握りしめて熱く語る。
彼は男の子らしくヒーロー好きだ。
しかも、昔はそのヒーローの必殺技を地で行ってしまう法術の知識があったのだからタチが悪い。
少なくとも実戦でヒーローもどきな事をやっていなかった事を願う。
「変身ーー!!」とか叫んでいたら、例え過ぎ去った時代の事とはいえ、我が弟ながら恥ずかしいとシリンは思ってしまう。

『でも、忍者が消える時に風が吹くのは、そのスピードが早いからとかじゃないの?』
『そーかもしれねぇけど、そんな万国人間ビックリショーの人間みたいな事できるわけないだろ?だから、風の法術と転移法術を使ってそれとなくだな…』
『まさか、それマジでやったりした?』

恐る恐る問うシリン。
にかっと翔太は笑みを浮かべる。

『俺は有言実行な男だ!!』

ガッツリバッチリ叫ぶ翔太。
反対に盛大に顔を引きつらせるシリン。
しかし、翔太がすぐにため息をつく。

『けど、奥さんにダメだしくらわされて、実戦では使えなかったけどな…』

(いや、奥さんの方が正解でしょう。んな、アホな事に高度な法術理論を用いないで欲しい。本当に、本当に)

今の偉い法術師の人が聞けば憤慨しそうな使い方だ。
ヒーローに憧れて高度な2属性法術を組み合わせた法術。
しかも、風は効果のみに使い、実際は転移するだけの法術。
何とも風は意味がない。

『けど、身代わりの術は使ったぜ!!』
『それを言うなら変わり身の術じゃ……』
『転移法術の2重発動で、自分が転移すると同時に丸太を自分がいた場所に転移させるという高度な法術!いや~、タイミングが難しかったのは覚えているぜ』

相変わらず理論は分からないだろうが、変な事だけ覚えているものである。
変わり身の術。
使える法術かもしれないが、わざわざ丸太を変わり身にする意味が分からない。
強力な法術を丸太がくらえば、丸太がさっくり無意味に跡形もなく消えるだけだ。

『やっぱり、アニメとかの必殺技は実践してみたいだろ!』
『そーだね…』

投げやりに返事を返すシリン。

『風といえば、やっぱり究極の風の必殺技で螺旋が…』
『他にもやったんかい?!』
『おうよ!流石に真似しようと思っても無理だったのは、血継限か…』
『いや、もういいから』

あまり突っ込むとヒーローについて延々と語られそうだ。
シリンは深いため息をつき、きらきら目を輝かせながら思いをはせる翔太を見て更にため息をつく。
高度でアホな法術ができれば後世に伝わっていませんように、と思わず願ってしまうのだった。



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