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×「悲しみに5つのお題」

2009-11-11 23:43

悲しみに5つのお題

だーく&だーく+ちょっとらぶ?
そしてBL、とってもBL
ショートショートとってもショートなので適当に読み流していただけるとありがたい。
唐突に思いついたものなので。





全部ドゥールガさんと翔太君


許されない愛


種族が違う、性別が違う。
それでも抱いてしまった想いは消せないものだ。

俺の名は、ドゥールガ・S・レサ。
この名は与えられたもの、作られた者の証の名。
だから、俺はこの名があまり好きではなかった。
彼…あいつに笑顔で名を呼ばれるまでは…。

『愛してる、翔太』

笑みを浮かべながら、日本語でそう告白すれば、相手が見せるのは呆れたような表情とため息だ。
俺が翔太と話をできるのは、俺が翔太と戦ってメタメタにされた時。
正直敵わないのだ。
反則とも言われる法術を使っても、俺は翔太に勝てない。
だが、今はそれも嬉しいとすら思える。
俺が翔太に負けるから、翔太はこうして俺の心配をし、俺を見て、俺の話を聞いてくれる。

『お前…、いい加減飽きてこないか?』
『全く飽きない。いくら言っても足りないくらいだ』
『これで足りないのかよ…』

そう、俺の溢れるばかりの愛情は、どれだけ言葉にしても尽きる事がない。
それを翔太は分かってくれているだろうか。
初めて抱いたこの愛情を、翔太が全て分かってくれる日は来るだろうか。

『ドゥールガ』

俺の告白を困ったように受け止めながらも否定せず、苦笑しながら俺の名を呼ぶ。
ポンっと頭の上に置かれた手で軽く頭を撫でられる。
昔から変わらない翔太の癖だ。
頭を撫でられるのは、子供扱いされている苛立ちと、翔太の温かな気持ちが伝わってくる嬉しさで複雑だ。

『あんまり、無茶すんなよ』
『しないさ』

翔太、分かっているか?
俺はもう大人と言っていい年齢になるんだ。
背も、成人していると言っても小柄らしい東洋人の翔太の背も抜かした。
俺は、真剣にお前を愛している。
愛しているんだ。

これが、決して叶わない、報われないものだと分かっていても。
この気持ちに嘘はつけない。



鋭い切っ先のナイフ



研究者から武器を渡された。
何の意味があるのだろうか。
俺達には鋭い爪がある、尽きる事ないと言われるほどの強大な法力を内包している。
何のための武器か。

「ああ、万が一の時の為だよ」

ヘラヘラっと笑って答えたのは、顔を見るだけで苛立ちすら覚える研究者。
俺たちのような実験体は、皆彼らが嫌いだ。
それでも逆らわないのは、逆らえない理由があるからだ。

「他の子達にも渡したよ。君もちゃんと常備するようにね」

肉体が丈夫だと言われる俺たちの肌すら傷つけそうな、小さなナイフ。

「万が一、法力が尽きて敵に囲まれた時に使うんだよ」
「武器として?」

そう問う俺に、研究者は嫌な笑みを浮かべる。
それは俺を物であるかのように見る嫌な瞳。

「やだな、武器じゃないよ。それで自害するんだよ」

思わず一瞬殺気を向けてしまったが、愚鈍な研究者は気づいていないだろう。
殺気すらわからない鈍さ。
こんなモノに手綱を握られている事が腹立たしい。
だが、そんな愚鈍なモノに俺は逆らえない。
そう作られたからだ。

「万が一君らが捕らえられて、色々話されても困るし、そのナイフ特殊だから、刺せば一瞬で身体ごと炭になるすぐれモノだよ!」

ぎりっと手にしたナイフが折れそうになるほど強く握りしめる。

「ちゃんと常備するんだよ」

そう言いながら研究者はへらへらとその場を離れる。
絞殺したい思いを出さず、殺気も出さずにこらえた俺は、自分を褒めたいと思う。
こんなナイフなどいらない。
だが、持っていなければ自分の立場がどうなるか分からない。

「…今更、こんなもの遅いがな」

すでに姿の見えない研究者に向けて、俺は嘲るような笑みを浮かべる。
このナイフの意味はない。
どれだけ鋭いナイフでも、どれだけ性能が良いものであっても。

― 少し毛をもらってもいいか?ちょっとドゥールガ調べてみたいって言ってるヤツがいてさ。あ、いや、調べるって言っても悪い意味じゃないぞ!興味本位というか、アイツ馬鹿だから、悪用とか絶対しねぇし…!

翔太にそう言われて、だいぶ前に俺は自分の毛を何本か翔太に渡している。
あちらでは俺達種族の解析をすでにしている頃だろう。
俺達種族の解析をしたからと言って、翔太ならば絶対に悪用させない。
それが分かっているから、俺は躊躇いなく毛を渡した。
今ではそれが良かったと思っている。

何でも思い通りになると思っていたら間違いだ。
俺は、俺の思うように動く。




溢れんばかりの涙



コレを俺は翔太の元に持って行くのは嫌だった。
絶対に翔太が悲しむと分かっていたから。
だが、コレを持っていかないわけにはいかなかった。
再び悪用される可能性があり、俺の力で全てを消し去る事は出来ないからだ。

黒髪のまだ幼さの残る少女の身体を、俺は翔太に渡す。
彼女の腹には大きな穴が開いており、その周辺の服は真っ赤だ。
俺が彼女の腹をえぐり、この手を突き出したからだ。
後悔はしていない。
彼女と翔太が敵対するかもしれない事を思えば、俺のした事は間違っていない……はずだ。

『そうか。……そう、か』

決して開かぬ瞳と、真っ白とも言える青白い彼女を顔を見つめながら翔太はそう呟いた。
声には深いほどの悲しみが込められているのが分かる。

『利用、されそうだったんだ。姉さん…』
『黙ってて、悪かった』
『いや、いい。多分、言えば俺がそっちに乗り込むかもしれないって思われてたんだろ?』

無理に笑みをつくる翔太。
無理やり笑わないでほしい。
見ているこっちが悲しくなる。

『ちゃんと、今度こそ、埋葬できるな』

翔太の声は少し震えていた。
俺は少し前に知った事なのだが、大震災で亡くなったらしい翔太の姉の遺体は、どうやら俺達を生み出した科学者達の企業が回収していたらしく、彼女の遺体は悪用されようとしていた。
翔太を悲しませる存在として、彼女を敵として仕立てようとしていた。
だから、彼女の瞳が開いてすぐ、動くようになってすぐ、俺は彼女を殺した。
仲間同士で殺しあう事、それは決して禁止されていなかったから簡単だった。
人の、女の、まだ子供とも言える彼女の身体は弱かった。
俺のこの手が簡単に突き抜けてしまうほどに。

『ドゥールガ』
『何だ?』
『…仲、良かったんだぜ』
『そうか』
『姉と弟なんて、異性同士だから仲悪い姉弟とか結構多いらしいけど…仲、良かったんだ』

翔太の涙声に、俺は空を見上げる。
清々しいほどに綺麗な青空が広がる。

『喧嘩も結構たくさんした。でも、嫌いで喧嘩したわけじゃなかった』

横目に見る彼女の頬に、ぽたりぽたりっとこぼれて落ちるものがある。
翔太が泣いているのだろう。
その涙をぬぐってやりたいと思う。
だが、彼女を殺したこの手で、翔太の涙をぬぐっていいものか…迷う。

『俺、父さんも母さんも姉さんも…好きだった』

過去形になってしまうのは、翔太の言う彼らがすでにこの世にいない存在だからか。

『失ってから、大切だったって気づくのは………馬鹿だよな』

平穏な生活。
俺はそれを知らない。
生まれてからずっと、貧しい生活が続き、大震災の後は母に今の研究所へと売られたからだ。
だから、翔太の気持ちは分からないのだろうと思う。
俺は、翔太の気が済むまで、その場でじっと立っていた。
次に翔太が俺の目を見て、本当の笑みを浮かべてくれるまで。




死地への旅立ち


『行くのか?』
『ああ』

いつものように戦いを終え、少しだけの会話を楽しみ、翔太に治療してもらって俺は行く。
戻るのだ、あの研究所へと。

『ドゥールガが望めば、こっちに来てもいいんだぞ?』

何度か翔太はそう提案してくれた。
翔太の奥方も親友も同じように言ってくれている。
何度か会った事がある。
翔太の隣に当たり前のように立つ彼女に、捻り潰したいと思うほどの憎しみを頂いこともあった。
だが、彼女は俺の翔太への思いを肯定してくれた人だ。

『翔太が良くても、多分俺の存在は受け入れられない』
『…ドゥールガ』
『俺は、翔太の仲間を何人も殺しているんだぞ』
『…っ!』

俺の手が血で汚れているのは今さらだ。
この時代、いまだ人を殺めた事のない優しさを持つ翔太は、俺がその事を口にするととても悲しそうな表情をする。
お前に、そんな表情はさせたくないんだがな。

『俺は、翔太と共に暮らすよりも、少しでも翔太が俺に気持ちを向けてくれればそれが一番嬉しい』
『気持ち?』
『愛してる、翔太』

気持ちを込めていつもの告白を。
いつも呆れたような視線を返す翔太は、その時だけ反応が少し違っていた。
何か言いたそうな視線を向けてくる。

『翔太?』
『………き、気持ちを向けるって、例えば何すればいいんだ?』

散々、愛しているのは奥さんだけだと言っていた翔太にしては珍しい返答だ。
少し期待しながら、俺は考える。
まぁ、多分無理だろうけどな。

『キスのひとつもくれれば、じゅうぶ…』
『できるかぁぁ!!』

どこから取り出したのか、ハリセンでのツッコミ付きで拒否されてしまった。
相変わらずつれない。
そこが翔太らしいと言えば翔太らしいのだろうけどな。
ぜーはーしている荒い息を整えながら、翔太は自分を落ち着かせるように小さく息を吐く。
むっとした表情を向けてくるが、すぐにふっと笑みを浮かべる。
その笑みが、俺は好きだ。

『また、な。ドゥールガ』
『ああ、また』

そうして俺は再び研究所へと戻る。
そう、帰るのではなく”戻る”のだ。

よく、戦場へ向かう事を死地へと向かうと表現する者がいる。
俺以外の者はそう考えているかもしれない。
だが、俺にとってみれば、研究所こそ死地ではないかと思う。

遺伝子を操作され、姿までも変えられた俺達は、研究者から見ればモノだ。
そこに転がっている石ころを磨いたら、ちょっときれいな石だったから重宝している、その程度だろう。
その石の輝きが曇れば簡単に捨て去るように、使えなくなった俺達仲間が簡単に”廃棄処分”されていくのを見た事がある。
俺達のような存在の命が、モノとして扱われるように軽い場所。
それが俺の今戻る所だ。




あなたと一緒にいたかった



再び世界に震災が訪れた。
あれを震災という一言で表現していいものか。
神を信じる者の1人はこう言った。
戦ばかりするこの世界を見て、神が怒りの鉄槌を下したのだと。
まぁ、その言葉は間違っていないのかもしれないと、俺は少し思った。
なぜなら、俺達の目の前に広がるのは、無残にも綺麗に崩れた研究所だったからだ。

研究所内にいた研究者達は、殆どが圧死。
一部の研究者は安全な場所へと逃げたらしいが、そこまでは分からない。
だが、俺達研究の被害者は唐突な自由を与えられた。
それだけは分かった。

「おい、どうする?」
「どうするったって、どうすればいいんだ?」
「多少の喰い物なくても、俺達は平気だけどさ…」

丈夫な身体が幸いと言うべきか、俺達は普通の人間のように、1日最低3時間の睡眠や、3食の食事が必要なわけでもなかった。
水だけで1ヵ月は生き延びる事ができるだろう。

― ま、なるようにしかならなかったからな。

その時頭によぎったのは翔太の言葉。
翔太は元々多くの人を率いる立場ではなかったという。
成り行き上、上に立つ事になってしまったと言っていた。
それでも、自分にできる事をやっていくしかないのだ。

「まずは、衣食住の確保だろう。確保できそうなものから適当に漁ってみるのはどうだ?」

その俺の一言がきっかけで、まとまりを見せた俺達同類。
気がつけば俺は皆を指示する立場になっていた。
上に立つ立場が嫌だったかと言われれば、分からないと今でも思う。
だが、彼らをまとめるのに集中し過ぎたと、俺は後に後悔するのだ。


あれから十何年、いや何十年経っただろうか。
身体も丈夫、法力もかなり多く、それでいて人よりも随分と長い寿命を持つ俺達は、あれからかなりの時が経っているのに気づいた。
そして、日本列島がほぼ沈んでしまった事を知り、翔太がすでにこの世にいない事を知った。

「まだ、話したい事が多くあった」

呟く言葉は風に浚われ消えていく。

「お前の家族、子供の頃の話、今の家族の話」

戦いの後の少しだけの会話では、知る事は少ないと俺は思っていたのだ。
話し足りない。
もっと、もっと、多くを語りあいたかった。

「翔太…」

涙が出ないのは何故だろう。
悲しすぎて身体が感情に反応しきれないからか。
大きな後悔を今抱いているからか。

初めて愛した人、そして今後も翔太程深く愛する相手はいないだろう。
それだけ大切だった存在。
だからこそ思う。

もっと、一緒にいたかった。





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