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×マリーさんと奥さま
メニュー化に伴い、再掲載。
…というより、過去の探すの面倒なので;
…というより、過去の探すの面倒なので;
マリーさんと奥さま
私が仕えるシリン・フィリアリナ姫は名門フィリアリナ家の姫様。
姫様と年齢が一番近いメイドが私という事で、私は姫様の専任のメイドをやっている。
その姫様も、もう5歳になられます。
「ねぇ、マリー」
「はい、何でしょう、奥様」
フィリアリナ家の奥さま、ラティ・フィリアリナ様がため息をつく。
お仕事が忙しくて姫様の側にあまりいる事が出来ないという事で、昼間の姫様の様子をこうやって奥さまにお話しするのが私の日課。
「シリンは何か欲しいものとか言っていた?」
「いえ、姫様はあまり何かを欲しがらないですから」
「そうなのよね…」
奥さまはとても美しい方、旦那さまも素敵な方なのです。
姫様には双子のお兄様がいらっしゃって、名前をセルド・フィリアリナ様。
セルド様はとても優秀でお綺麗な顔立ちで、実はちょっと近寄りがたいと私は思ってしまうの。
姫様は誰にでも笑顔で優しく接して下さるのだけれども、セルド様は主従関係をきちんと区別して接してらっしゃるから、私は少し接しにくいと思ってしまう。
フィリアリナに仕える事を仕事だと割り切っている方にとっては、気にしないのでしょうけれども、私はちょっと苦手に感じているの。
「可愛い服を買っても、シリンはあまり着てくれないのよね」
「姫様は動きやすい服を好まれるようですから」
「せめて可愛らしい色の服をと思って、薄紅色のドレスを多く買っているのだけれども」
奥さまは再びため息をつく。
奥さまが娘である姫様を着飾ったりするのが好きというのは、実はメイド内では当たり前の事として知られている。
多分、知らないのは姫様とセルド様、あと旦那さまくらいじゃないかしら?
「私、姫様には薄紅色のドレスがとてもよく似合っていると思います!」
「マリーもそう思う?」
「姫様には淡い色が大変よくお似合いです!姫様の優しさが引き立ちますし!」
「そうなのよね。シリンはとても優しいし…もう、すごく可愛いのに、どうしてそれを全然自覚しないのかしら」
「そうなんですよね、奥様!姫様って、どうしてか自分が平凡容姿だと思い込んでいるようなんですよ」
姫様は確かに世間一般の貴族の皆さまと比べたら、美しさでは勝てないかもしれない。
けれども、姫様はとても可愛らしい!
ちょこちょこっと歩いてにこっと笑顔を見せてくれた日なんて、あまりの可愛さに私は内心飛びはているのにっ!!
姫様ってば、全然無自覚なの。
「やっぱり、あの子の教師は変えた方がいいかしら?」
ぽそりっと奥さまが呟く。
姫様はセルド様とご一緒に教育を受けてらっしゃるのだけれども、どうも教師の姫様への評価はあまり良くないご様子。
姫様に沈んだ様子はなく、セルド様がよく姫様を気遣うような事を姫様におっしゃっているのを耳にする。
「シリンはとても一生懸命頑張って、決して遅いスピード進んでいるわけではないのに…あの忌々しい爺が」
ドスのきいた低い声が奥さまから聞こえた気がする。
き、気のせいかしら?
「お、奥さま…」
「あら、いけない。本音がこぼれそうだったわ」
いえいえ、奥さま。
本音、ちょっと零れてます。
後方支援とは言っても、さすが軍属の奥さまです。
ちょっと殺気っぽいもの出てませんでした?
「私が教える事が出来ればいいのだけれども…」
「奥さまは、お忙しいでしょう?」
「それもあるのだけれども、シリンに断られてしまったの」
ちょっぴりしゅんっとなる奥さまは、本当に姫様の事を可愛がっているのよね。
姫様は奥さまのお仕事がお忙しいのが分かっているから、断ったのだと私は思う。
「シリンが自分に自信を持てないのって、あの耄碌じじ…老教師がまだシリンの教師である事も一因だと思うのよ」
奥さま、今普通に耄碌爺とか言いそうになりませんでした?
「シリンの生まれ持った能力がどんなものであっても、シリンはシリンである事に変わりはないのに。その程度の事で差別する無能教師なんて、廃棄物にしてしまいたいわ」
大層怖い事をおっしゃっている奥さまだけれども、ただ単に姫様をとても可愛がっているだけということを私は知っている。
普通ならば奥さまが過保護すぎると思うのかもしれない。
けれど、姫様に関しては、私は過保護すぎるくらいでいいと思う。
「けれど、何を言った所で廃棄物処理はできないのよ、ね」
奥さま、普通に廃棄物処理ってなんか怖いです。
「ふふ、マリー」
ちょっと怖い雰囲気が一気にがらりっと変わって、奥様は私を見る。
あ、何かを企んでいる笑みですね、奥様。
「実はね、またシリンの新しいドレスを作らせたの」
ごそごそっとどこからともなく取り出した一つの箱。
多分その中にドレスがおさまっているのだと思う。
「またお願いね、マリー」
「お任せ下さい、奥様!」
「一応、シリンが好みそうななるべくシンプルなものにして、お揃いのリボンもあるから、これを着る時はそのリボンを使ってね」
「分かりました」
私はその箱をしっかりと受け取る。
奥さまが作らせたドレスを姫様の衣装ケースに忍ばせる。
それを見つけた時の姫様の、ちょっと困惑したような表情がとても可愛らしくて、可愛らしくて、私のちょっとした楽しみの一つだったりする。
「写し絵もお願いね!」
「勿論です!」
写し絵というのは、ティッシの高等法術を使って創り出された、その場にあるものを紙に綺麗に写し取るかなり貴重な法術具。
これを持っているのは王家かフィリアリナ家くらいじゃないかって私は思う。
そんな貴重なものを、このお屋敷では姫様の可愛らしい姿をおさめるのに使っている。
すごく有効な使い方だと私は思うの。
これで、困惑した姫様のちょっと舌っ足らずな声とかも記録できれば最高なのにっ!
明日のドレスを見つけた時の姫様の様子を楽しみして、今日の私のお仕事はこれで終わり。
ドレスがあまり好きではない姫様だけれども、決してそれを捨てようとしないで1度はちゃんと着て下さる姫様の優しさが私は大好きです。
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